MultiSwitchの活用方法
スカパー!プレミアムサービスをPCで視聴し始めると、便利さに気づきどんどんチューナーを増やしたくなるもの。ところがプレミアムサービスの最大の欠点は、アンテナ線を分配できないことであり、チューナーを増やせば増やすだけ、アンテナも増やす必要がある。
4チューナーまでは、2出力のパラボラアンテナを2基設置する以外に解決策は無い。一方で、パラボラアンテナ2基までならなんとか設置できたとしても、自宅にパラボラアンテナを3基以上も設置するのは、日本の一般的な家屋では困難を伴う(ベランダにずらりとパラボラアンテナを並べると、近所から変な目で見られることもあるらしい)。
「MultiSwitch」という機器をチューナーとアンテナとの間に挟んで使用することで、2出力のパラボラアンテナ2基だけでも5チューナー以上に対応できる場合があるので、この記事では日本製チューナーでも使えそうな海外製MultiSwitchの導入方法と活用方法をまとめた。
■スカパープレミアムサービスは、なぜアンテナ線を分配できないのか?
通常のBS/110°CSデジタル放送は、全て東経110度軌道上の衛星から放送波が出力されている。従い、パラボラアンテナ一つで全ての放送の電波を受信可能であり、受信した電波を分配しても問題無い。
ところがスカパープレミアムサービスは多チャンネル放送を実現するため、東経128度軌道上のJCSAT-3A衛星と、東経124度軌道上のJCSAT-4B衛星の2衛星から電波が発信されている(東経128度CSを利用したパーフェクTV!と、東経124度CSを利用予定だったJスカイBとが合併し、スカパーが誕生したこととも関係している)。
またスカパーでは、それぞれの衛星から偏波面の異なる2種類(垂直V又は水平H)のパターンの電波で放送している。従い、チャンネル切り替えのたびにJCSAT-3A(V)、JCSAT-3A(H)、JCSAT-4B(V)、JCSAT-4B(H)、の計4パターンのうち、1種別を選んで受信する必要があるが、同軸ケーブルはこれら4パターンのうち1種類しか伝送できない。従い各チューナは選択されたチャンネルが属する電波を受信するため、アンテナに向けて制御信号を送出することで、受信に必要な電波種別を切り替えている。
このような処理を行うため、アンテナとチューナーとは1対1で接続する必要がある。
電波種別 | チューナ制御信号 |
JCSAT-3A(V) | DC11V / パルスなし |
JCSAT-3A(H) | DC15V / パルスなし |
JCSAT-4A(V) | DC11V / パルスあり |
JCSAT-4A(H) | DC15V / パルスあり |
但し4種類の電波を受信できる環境であれば、4種類の中から1種類を選ぶことで全ての放送を視聴できる。MultiSwitchは、複数のパラボラアンテナから計4種類の電波を受信し、チューナーからの制御信号により4種類から1種類の電波を選んでチューナーへ送り出す装置なので、運用の際には以下の制限がある。
・ アンテナは必ず4出力必要(2出力に対応したマルチ衛星アンテナSP-AM500MやSM-AM600Mであれば、パラボラアンテナ2台で4種類の電波を受信できる)。
・ MultiSwitchとチューナーとの間では、電波を分配することはできない。
・ MultiSwitchを導入してもしなくても宅内配線工事の手間は殆ど変わらないので、アンテナを3基以上設置できる環境であれば、アンテナをどんどん増やしていく方が拡張性は優れている。
■海外製CSチューナーやMultiSwitchはスカパーで使えるか?
海外のCS放送では、DIRECTVなどスカパーとよく似た衛星切替方式を採用している会社があり、これら海外製チューナー/アンテナでは、主に垂直V波=13V,水平H波=18Vの電圧で制御信号を送出する方式が採用されている。ところが日本のスカパー用チューナー/アンテナは、 垂直V波=11V,水平H波=15Vの電圧で制御信号を送出しているため、海外製のチューナーを日本製のアンテナにそのままつなぐと、誤作動する可能性がある。
対応策として、単純に海外製チューナーの制御信号電圧を2~3Vずつ下げて、垂直V波=10~11V,水平H波=15~16Vに変換してやれば、日本製チューナー/アンテナの制御信号電圧である 垂直V波=11V,水平H波=15Vの電圧に近づけることができるので、誤作動をある程度防止できる。
変圧器のあい工房製AK-1311FFや、コンテック製VR-303などをチューナーとアンテナの間に挟むことで、電圧変換可能であるが、日本製チューナーと海外製チューナーの併用する時には、気をつけないと誤作動や誤接続の原因となりかねない。
それよりも、チューナー/アンテナ共に日本製電圧の垂直V波=11V,水平H波=15Vに対応した製品に揃えたうえで、日本式の11V/15V電圧に対応したMultiSwitchを導入するのがシンプルな接続方法と言える。
■日本製チューナーでもそのまま使用可能なMultiSwitch
アメリカなど海外で使用されている各種MultiSwitchでも、MultiSwitch自体に電源を搭載していない機種では、単にチューナーからの信号を各衛星に振り分ける動作だけをしているものがある。このような製品では、チューナーからの制御信号の電圧が11V/15Vであってもそのままの制御信号を衛星に送ってくれるので、実際に使ってみると、制御信号の電圧を変換せずに衛星の切り替えが可能となっている。但し動作保証対象外の使用法なので、どの製品が日本製チューナー/アンテナでも電圧変換なしに使用できるかは、実際には使ってみないとわからないうえ、使用中に不具合があっても自己責任で対応する必要がある。
管理人の自宅では以下写真のZinwell
MS6X8WB-Zを使用している。米国中古市場で安価に多数出回っているほか、新品の製品も購入可能である。個人輸入する場合は、ebay.com や、 amazon.com などの大手通販業者を利用すると、国際便での宅配を手配してくれるので簡単。稀に日本のアマゾンなどでも出品されていることがあるが、2016年1月現在では、送料込みでも米国から個人輸入した方が安価で入手可能。
試しに米国で売られていた中古品を約1000円で購入し、PX-TBS6981×2台、PX-TBS6982×1台、スカパー純正チューナー×2台、の8チューナーと、SM-AM600M×2台とを、電圧変換せずにそのまま接続してみたところ、特に問題も無く動作することが確認できた。
Zinwell MS6X8WB-Z (8出力)
写真上左側の、13V、18V、と書かれた端子4個をアンテナに接続し、写真下側の、OUT1~OUT8、と書かれた端子8個をチューナーに接続する。チューナーは1台つなぐだけでも動作するが、アンテナは必ず4本全部つないで使う。
写真以外の機種でも電源不要のMultiSwitchであれば、チューナーから供給される電源で動作しているため、チューナーが発信する制御信号の電圧を変換しなくても、そのまま使用できる可能性が高いと思われる。
(注:制御信号のパルス周波数が違う機種もあるとのこと。スカパー製アンテナのパルス信号仕様は32~53kHz。)
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